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FlYER 1998 JUN No.27 2000年6月

インタビュー・文:佐藤創一
写真:NAKA
”音楽を生み出す”ための強烈な素養と、ナチュラルな日々の移り変わりの中で
育まれたニュー・アルバム『ラプンツェル』。
そこにあるのは唯々弛まなく毎日を積み重ねた彼女の自然体。
Coccoはいったい今、どこにいるのか。

かなりフランクでプレインなインタビューであった。
 気楽だった訳ではない。緊張もした。彼女は彼女であり、3年前に初めてインタビューした時と本当は何も変わっていない、と思うのだが、日常感のナチュラルな流れの中で弛まなく毎日を積み重ねた彼女の自然体は、久しぶりに会った僕にそんな気持ちを抱かせたのか。彼女はいったい今、どこにいるのか。

――アルバム3枚目ですよね。どうでした?レコーディング。1、2枚目と同じスタッフが中心だったと思うんですけど。初めて会った時と比べると、変わりました?
「親密になった(笑)。つかず離れず。うーん・・・慣れたっていうか、人見知りするから。良く分かんないけど、仲良くなった、最近は」
――なんか聞くところによると、スタジオで自炊してたそうで。
「うん。した。スタジオにコンロ持ってってから。東急ハンズで鍋買って。鳥団子鍋とか魚の味噌汁とか、鍋が一個しかないから炊飯器でご飯炊いて。カレーとかも作った。カレーは思いのほか(スタッフに)好評。うん。アイススケートも行ってた、合間に。だからあっちゃん(相変わらず彼女は自分の事をリズミカルにこう呼ぶ)だけはあんまり煮詰まらなかった、スタジオで。みんな大変そうだったけど」
――(笑)いや、なんとも。雰囲気的には、リラックスじゃないんだけど、根を詰めたような歌い方をしなくても、かなり濃い歌い方になってるような、力が抜けて自然体になっているというか、そう思ったんで、レコーディングの話を聞いたんですけどね。作業とか、変わってきた感じとか、あったりしたのかな、と。
「なんか前はあっちゃんが探す音が”シャンシャン”だったら、”シャンシャン”は何でしょうって大太鼓からタンバリンまで全部叩いて確かめる感じだったけど、最近は”シャンシャン”といったら、これはシンバルかも知れないって」
――自分の中で?
「そうそう、だからね、前は一発録りだとかやる時とか、音は分かるんだけど、それがなんの音か分からないから皆呼んで。それまでは”シャンシャン”って音を出して欲しい時に、ネギ(勿論、根岸孝旨氏)に言ったら、ネギが、じゃあそれは誰かなってみんなに話して、あっそれ俺だっててっちゃん(ドラムスの向山氏)が言うんだったけど、最近は、これは多分てっちゃんに言えばいいやっていうのがあって。」
――じゃあ、今まではないんだけどこんな感じ、とか、新しいこんな音はどうだろう、とか今回出てきました?
「うん。それは毎回かもな。いつもある」

 インタビューをしてみて、改めてそうか、と思ったのは、彼女の作る曲が、はじめから全て完成形である、という点だ。自分の中から湧き出した詩と曲は細かいところまで既に出来あがっているという事実。しかも彼女の場合は、テクニカルにメロディを積み上げていくタイプでもないし、ましてや”編集感覚”という言葉とも無縁である。実は、そういうミュージシャンは今のミュージック・シーンにおいては、意外と、というか、かなり少ない。彼女はそのイメージを伝える方法を初めは知らなかったのだが、根岸孝旨を中心としたサウンド・プランナーチームとのコール&レスポンスの流れの中から、時の経過と共に形として掴んできたのだろう。特に、『雲路の果て』、『樹海の糸』、『水鏡』、と4曲のシングルをインクルードする今回のアルバムはそういった意味においてひとつの完成形と言える。どの曲もワンラインのメロディだけでなく、フックと広がりが感じられ、かなり強力なメロディ・メイカーぶりを発揮、しかもどの作品に関しても、アレンジ云々というところではないところでも成立しているというのが凄い、と思える。

――型通りの質問で申し訳ないけど、アルバムタイトルの『ラプンツェル』ってグリム童話の・・・。
「童話。(突然)あっ!それで思い出した。昨日のインタビューの人に嘘ついた。なんでラプンツェルってつけたのって言われて、髪といでる時に、ラプンツェルでいいやってくらいに思ったって。違うよ!何か絵描いてて、ラプンツェルにしようと思ったんだ。髪ときながらじゃない(笑)」
――絵って、どこで?
「お家で。アルバムジャケットの絵」

――あれってCoccoさんが描いたの?
「うん、いつも。レコーディング中に描いたの。描きながら、これラプンツェルみたいだなぁって思って。うん、それ忘れてて。何でって言われたから急に。うん、別にラプンツェルの絵描こうと思って描いた訳じゃなくて。そう、曖昧な点が多いからちょっと説明しにくいから、髪とかといでる時に思ったかもって言っちゃったー(笑)」
――ぱっとでちゃうよねそういう事。ほわーっと出て来ちゃうんでしょう?
「うん。っていうかそれくらいあんまり大した意味はなくつけた、いつの間にか。それくらい深い意味はない」

 「生み出したものは、一人歩きしてなんぼだから。うん、歩いていって。さよなら」と語り、時々こちらが分からなくなるほど、自分のいる場所を不明確にする彼女。ストイックなようでいて、実は軽やかで、ピュア。そして何よりも才能豊かなアーティスト。しかし、彼女の本当の心は彼女の中だけにある。彼女はそれを他人の為に切り売りする気はない。だから、インタビューにも答えを用意しようとするが、そこには答えはない。しかしだからと言って、そこに冷たさや虚無感が横たわっている訳ではないだろう。日常的なナチュラルさの中にも狂気はあるし、狂気の中にも優しさや一般性はあるのだ。
 タイトルをグリム童話の一編からとったこの3枚目のニュー・アルバム『ラプンツェル』の中にあるのは、”音楽を生み出す”という意味での強烈な素養と、嘘もあれば本当もあり非日常的でもあり、辛くもあり優しくもある、彼女の日々の移り変わりそのものなのか。

 かなりフランクでプレインなインタビューであった。
 気楽だった訳ではない。緊張もした。久しぶりに会った僕にそんな気持ちを抱かせた彼女が、今いる場所はいったいどこなのだろう。